【塾特集】子ども達の学力を底上げするために、親の意識改革を!

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子ども達の学力を底上げするために、親の意識改革を!

―個別指導Axis 後藤隆司さん

 近年、日本の子ども達の学力低迷がクローズアップされています。特に岩手では2023年の大学入学共通テストの都道府県別平均点が全国ワースト1。同年4月に行われた小学6年生と中学3年生が対象の全国学力テストでは、小学校の国語を除くすべての教科が全国平均を下回る結果になりました。そこで、現状に警鐘を鳴らしている熱き指導者にインタビュー。解決するために取り組むべき課題や、これからの塾のあり方を聞きました。

個別指導Axis 後藤隆司さん

まず変えなければいけないのは、保護者の価値観

近年の岩手の学力に関するデータを見ましたが、ショッキングですね。

 小中学生は全国平均を下回った結果が出たものの、順位にすると毎年25位くらいで、そこまで悪くないんです。それが高校生の共通テストになると最下位になる。東京と160点も平均点の差があるのは残念ですよね。高校3年間の過ごし方に問題があるのではと考えています。例えば、中学生の部活入部率のデータを見てみると、岩手は全国3位でほとんどの子が部活をしています。ただし学校での部活にかける時間は44位と、全国的に見れば活動時間はかなり短い方。他県の中学生は忙しいながらも学習時間をつくる努力と工夫をしているのでしょう。実は中学生の通塾率も、岩手県は全国最下位なんです。大学への進学率も44位と低いのは、このあたりと連動しているのかもしれません。 

最近は高校受験対策で塾へ通う子が少ない?

 以前は中3の部活が終わった夏から受験に向けて塾に通う子が多かったのですが、年々通塾の判断が遅くなってきている印象です。保護者の方々が危機意識をもち「早いうちから少しずつでも」という方と、「のびのび育てたいから塾には行かなくていい」という方と両極端になっていますね。この仕事をして17年になりますが、最近は教育が必要なのは子どもたちより保護者だと思うようになりました。保護者は自分の経験から受験や勉強の仕方をイメージして伝えますが、時代は間違いなく変わっています。私もこの仕事をしているから考え方を刷新できていて、保護者は知らなくて当然だとは思いますが、親の時代の価値観を当てはめて考えていると、お子さんにとって様々なチャンスの芽を摘んでしまうかもしれません。

「知らなかった」では子どもが不利に。情報のアップデートを

昔と違う部分は、具体的にどういったところですか?

 たとえば英検やTOEICなどのスコアが、大学受験をすること自体可能か否かの判断材料になってきます。だから英語は一通り「書ける、読める、話せる」、つまり〝できる〟状態が求められます。また現高2生からは共通テストに情報Ⅰ、いわゆるプログラミングの科目が入ってくるんです。たとえ将来就きたい職業に必要なくても、一般教養として学び得点することが求められます。単純に受験科目も増えますし、教育課程が変わって学習の内容量も増えていますね。4月以降は英検も難しくなります。

 子どもたちは大変ですよ。よく頑張っています。自分のお子さんが通っている学校の勉強だけで志望校に合格できるのかを、保護者の方々が把握されているかどうかが重要です。知らなかったというだけでお子さんが不利になる時代。だからこそ保護者の方々に正しい情報、考え方をお話しながら啓蒙活動を続けていかなければと思っています。

個別指導Axis

社会で生き抜くためにも自信を持たせたい

昨年岩手本部に配属。以前は関西や宮城にいらっしゃったそうですね。

 もともとは二戸市出身です。私自身、地元の集団授業型の塾に通い、高校から盛岡で過ごしました。その後は進学・就職で西日本に。文化も違えば人柄も異なる地での生活は、ほろ苦いものでした(笑) 今でこそよく話しますが、もともとは人見知りですし口数も多くはありません。そこが東北人の良いところだと思っていたものの、社会人になるにあたり、しっかりした自己主張とトークスキルがあるにこしたことはないと痛感させられました。

 岩手は大学進学率が全国で44位と低いのですが、専門・短大・就職で離れる人も多く人口減少ランキングは15位。若者が県外に出て行っているのが現状です。地方から大都市に若者が流れる風潮は一般的なことなので驚きはありませんが、だからこそ都会に出るなら何かしら自信がもてる部分を持たせてあげたいのです。大都市で生き抜くうえでは、自己主張もスキルも必要。希望を持って都会に出たにもかかわらず、現実に直面してつらくなり地元に帰ってしまうパターンは避けないといけません。一度華やかな部分を見てしまうと、また吸い寄せられるように大都市に戻っていく。こういうのを繰り返している子って結構いるんです。これでは気持ちがどんどん消耗していってしまいます。

個別指導Axis 後藤隆司さん

大切なのは「自ら学ぶ」姿勢を身に付けること

今の岩手の子ども達と接していて、どのような印象がありますか?

 先ほどお話したように、学力という点では全国の中でも厳しいものがあります。何をするにもエネルギーが必要なのですが、久しぶりに岩手に戻ってきてみると昔に比べて子どもたちの元気と活気が感じられず、寂しい気持ちになりました。最近は〝自分のペースで〟というワードがトレンド化し、塾でも学校でもガツガツ取り組むことも少なくなってきました。しかし学力を底上げするためには学習量は不可欠です。子どもたちの学力向上のために岩手県内の塾や学校が連携して、何ができるのかを共に考え環境を整えることが大人の責任なんだと思います。

これからの塾が担う役目はなんだと思いますか?

 勉強を通して〝自分で考え判断し、行動できる〟経験をさせてあげることではないでしょうか。私自身、通塾している時は塾の先生から言われた通り、何も考えず一生懸命勉強したら結果的に成績は上がりました。そこが問題。学習の進め方の指示、進路相談などレールを敷いてくれる人がいないと何もできないんです。なぜなら受け身で学力を身につけたから。

 勉強に限らず自主的・能動的な行動が大切です。自分ができることできないこと、何をどうやっていつまでに仕上げるのかなど、ゆくゆくは社会人になって必要なスキルを学生のうちから勉強を通して身につけさせなければいけません。手をかけ過ぎず、考えさせ気づかせ、行動させの繰り返しです。もちろん評価も忘れずに。我々の指導がうまくいっているか否かは、子どもたちが通塾しているうちは判断できません。無事に卒業し、一人前の社会人になった時に初めて判断できます。志望校への合格はもちろんのこと、その先も見据えた指導をしていきたいと思っています。