健康ナビQ&A 第3回【肌のシミ・シワ対策】

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第3回【肌のシミ・シワ対策】

最先端の肌の皮膚科美容治療も
行っている
佐々木皮膚科・美容皮膚科の

佐々木豪院長 にお話しを聞きました。

佐々木豪 院長
平成10年、国立大学法人東京医科歯科大学大学院修了。東京労災病院などを経て佐々木皮膚科へ。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。東京医科歯科大学皮膚科臨床准教授

佐々木豪院長

― 今回は、子どもたちというよりも親世代や孫育て世代に多い悩み、肌のシミ・シワについて伺います。年齢を重ねると顔や身体にシミやシワが増えるのは、なぜでしょうか? 有効な対策はありますか?

 肌にシミやシワが出来てしまう理由から説明しましょう。それは光老化が主な原因です。つまり日光(紫外線)が引き起こす「肌の老化」のことで、具体的には肌で次のようなことが起きています。

【光老化による肌の影響】

1 紫外線によって肌のしなやかさを保つコラーゲンやエラスチンが破壊され、真皮層が変化して肌が弾力性を失ってしまいます。これにより、しっかりと肌の弾力性を支えることができなくなった肌にシワが寄ったり、たるみができたりします。

2 紫外線を大量に、かつ長時間(長期間)浴びることで、肌に「メラニン色素」が過剰に作られて「シミ」が発生します。子供の頃の日焼けはシミにはなりにくいのですが、大人になるにつれて日焼けによるメラニンが肌にたまってきます。

光老化による肌の影響

 このように紫外線によるダメージを受けて、肌はジワジワとゆっくり老化していきます。これが「光老化」です。時間をかけて目に見えるシミやシワになっていくため、「年齢を重ねると(光老化による)シミやシワが増える」という印象になるのです。

 光老化の原因が紫外線と聞くと、紫外線は人間にとって悪者のように思いますが、その一方で健康へのメリットもあります。

【紫外線を浴びるメリット&デメリット】

メリット:体内のビタミンDを生成する。(ビタミンDは、骨や筋肉を強くする栄養素のひとつ)

デメリット:シミ・シワ・たるみの原因となる光老化のほか、皮膚がんなどの健康被害を引き起こす

[補足]地上に到達する紫外線はUVA波とUVB波の2種類。地上に到達する紫外線の約95%がUVA波で、皮膚の深いところまで到達し、肌のシミ・シワ・たるみの原因に。UVB波は、地上に到達する紫外線のうちの約5%。皮膚の浅いところにダメージを与え、肌表面の細胞を傷つけたり炎症を起こしたりする。肌が赤くなる日焼けや、皮膚がんの原因にもなる。

紫外線を浴びるメリット&デメリット

― 紫外線は夏に強くなるイメージですが、夏以外も紫外線対策をした方が良いのでしょうか?

 環境省のデータによると、4~9月の紫外線量だけで1年間の紫外線量の約70%以上を占めるそうです。また、1日のうちで紫外線量が多いのは10:00~14:00で、正午頃がピーク。天候が曇りでもUVAは雲を通り抜けます。UVBも、薄雲りで約80%、雨の日でも約30%が地上に到達します。さらに、地面や壁に当たって反射する照り返しも、肌に与えるダメージを増やします。したがって、季節や天候に関係なく、紫外線対策は日常的習慣にするのが良いでしょう。盛岡は雪の降った翌日にとても良く晴れたりしますが、雪に反射した紫外線が想像以上に肌にダメージを与えることがあるので冬の紫外線も注意が必要です。

【おすすめの紫外線対策】

①日焼け止めを効果的に使用する

日焼け止め選びの際に気を付けたいのがPAとSPFの値です。その意味や、選び方を知っていますか?

◆PA=UVAをカットしてくれる目安(+の数で表示。4段階で+が多いとUVAカット効果が高い)
◆SPF=UVBをカットしてくれる目安(数字で表示。最大値50で、数字が多いとUVBカット効果が高い)

それぞれの値が高ければ(多ければ)OKと思っている人もいるようですが、値が高いと肌への刺激も強くなるため、日焼け止めを塗る体の部位やシチュエーションに合わせて使い分けることをおすすめします。普段の日常生活では「顔や首」には「PA++、SPF20前後」で十分です。アウトドアレジャーでは、腕など体の露出する部分にはPA+++または++++、SPF50を使うと良いでしょう。日焼け止めを買い求める際に参考にしてください。また、どんな値の日焼け止めでも、一度塗っただけではダメ。汗などの影響でとれてしまうので、2~3時間おきに塗り足すことが重要です。

日焼け止め

②帽子や日傘を使用し、出来るだけ肌の露出をさける工夫をする

帽子はキャップよりもツバが大きいハットタイプや、首の後ろ側まで覆うガード付きのものが紫外線対策としては有効です。また、夏場の日傘は顔や首だけでなく肩や腕まで、上半身への紫外線をガードできるのでおすすめです。日傘といえば、以前は女性が使用するイメージでしたが、近年は熱中症対策にも有効であることから、男性向けのデザインや大きさの日傘も数多く販売されています。男女を問わず紫外線対策に、ぜひ日傘を使用しましょう。

帽子や日傘を使用し、出来るだけ肌の露出をさける工夫をする

③紫外線量が多い時間帯の外出をさけ、日陰をうまく利用する

先にも述べましたが、1日のうちで最も紫外線量が多い時間帯は10:00~14:00。可能なら、この時間帯の外出を控えましょう。外出の際はできるだけ日陰を利用し、上記①②を含め自分に合った効果的な紫外線対策を行いましょう。

紫外線量が多い時間帯の外出をさけ、日陰をうまく利用する

④栄養素に配慮した食生活を心がける

光老化対策や、いわゆる美白(肌への健康効果)が期待できる栄養素として代表的なのが、βカロテン、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール、カテキン、葉酸などです。これらの栄養素を摂取するには緑黄色野菜のほか、カテキンとビタミンCが豊富に含まれる緑茶もおすすめです。ビタミンCやカテキンには抗酸化力があり、紫外線による光老化を防ぐ働きがあります。栄養バランスのとれた食事はもちろん、日常的に緑茶を飲むことも紫外線対策のひとつになるでしょう。

栄養素に配慮した食生活を心がける

― 若い頃の日焼けのせいか顔のシミが増え、メイクで隠しきれず悩んでいます。できてしまったシミやシワは諦めるしかないのでしょうか?

 できてしまったシミに対しては、皮膚科・美容皮膚科などで受けられるいろいろな「レーザー治療」で目立たなくするという選択肢があります。

 また、これは光老化によるシミに悩む世代だけでなく若年層にも言えることですが、体の(他人からも)見える部分にシミやアザなどがあると、それをコンプレックスに感じたり、子どもであれば、からかわれたことを気にして学校に行きたがらないなど、肌の見た目が精神的負担の要因になっていることがあります。色を薄くするなど、シミ、そばかすを少しでも目立たなくする治療で悩んでいる本人の精神的負担が軽減され、前向きになれる場合もあります。肌のことで気になる点があれば、まずはレーザー治療を積極的に行っている皮膚科医に相談してみましょう。また深いシワから浅いシワに関しても、さまざまな治療がありますので、相談してみてください。


まとめ

 肌にシミやシワが増えるのは、紫外線による光老化が原因です。紫外線には、骨や筋肉を強くする体内のビタミンDを生成するという健康効果もありますが、「光老化」によるシミやシワを防ぐには、やはり紫外線対策が有効です。日焼け止めはPAやSPFの値を確認して、シチュエーションや塗る体の部位で使い分け、2~3時間おきに塗り足すことが重要です。日傘も積極的に使用しましょう。また、栄養バランスに配慮した食事を心がけ、抗酸化作用のあるビタミンCやカテキンを含む緑茶を日常的に飲むこともおすすめです。

 できてしまったシミ、シワに対しては、皮膚科などで皮膚科美容の治療を受けるという選択肢もあります。年齢を問わず、肌の悩みがコンプレックスにつながる場合もあります。肌のことで気になる点は、皮膚科医に相談してみましょう。

佐々木豪院長
佐々木皮膚科