健康ナビQ&A 第1回【ニキビ】

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第1回【ニキビ】

佐々木皮膚科 佐々木豪 院長にお話しを聞きました。

佐々木豪 院長
平成10年、国立大学法人東京医科歯科大学大学院修了。東京労災病院などを経て佐々木皮膚科へ。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。東京医科歯科大学皮膚科臨床准教授

佐々木豪院長

― ニキビといえば思春期のイメージですが、何歳頃から出始めますか?

 個人差がありますが、低い年齢では7歳でニキビが出来た人もいます。ニキビが増えて悩むのは、やはり10代が多いものの、だからと言って10代にしか出ないという訳ではありません。大人も、幅広い年齢でニキビ(吹き出もの)は見られます。

― まずは、10代の子ども世代のニキビについて伺います。なぜ10代にニキビが増えるのでしょうか?

 思春期ニキビの主な原因は、①皮脂の過剰分泌 ②毛穴の詰まり ③毛穴の中でニキビ菌(アクネ菌)が増える、の3つです。10代は成長期を迎えて、男性は男性ホルモン、女性は女性ホルモン(黄体ホルモン・卵胞ホルモン)の分泌量が増加し、肌の皮脂量が増えます。それが毛穴に詰まることでニキビの発生につながるのです。

 具体的には、男性ホルモンには皮脂量を増やして肌の角質を厚くする働きがあるため、毛穴の出口付近の角質が厚くなって毛穴をふさぎ、増えた皮脂を閉じ込めてしまってアクネ菌が増えやすくなります。一方女性は、男性ホルモンと似た働きを持つ黄体ホルモンの分泌が活発になることで皮脂量が増えます。また、女性は生理前に黄体ホルモンが増えてホルモンバランスが乱れやすくなるため、このタイミングでニキビができやすい傾向があります。男女とも思春期のニキビは皮脂量が特に多い顔のTゾーン(額、鼻や鼻まわり)に出ることが多く、季節的には春から夏にかけて増えることが多いです。また、顔面だけでなく胸や背中の皮脂が多い部分にも出ることがあります。

ニキビの症状と進行段階

ニキビ

ニキビは進行具合によって以下のような種類に分かれます。

白ニキビ
初期、毛穴に皮脂が溜まり、毛穴をふさいでしまった状態。

黒ニキビ
白ニキビを放置していると、毛穴が開き、古い皮脂や角質が空気に触れて酸化し黒くなります。ここまでは、まだ炎症はありません。

赤ニキビ
皮脂が詰まった毛穴の中でアクネ菌が増殖。腫れたり赤くなったり、炎症がおきた状態です。ニキビ跡にしないためには、炎症がおこる赤ニキビになる前に治療するのがポイント。

黄ニキビ
赤ニキビの炎症が悪化して化膿した(毛穴に膿が溜まる)状態で、赤みがかったニキビの中心に溜まった膿が黄色く見えます。強い炎症により皮膚の組織が破壊されると、ニキビが治った後も、肌に凸凹が残る場合があります。これが、いわゆるニキビ跡です。

 すべての年代でニキビや吹き出ものは見られますが、ニキビが悪化しやすいピークはおおよそ16~18歳。多くの人が経験することもあり、ニキビは病院へ行くほどの病気ではないと考える人もいるようですが、皮脂を作りやすい体質やニキビができやすい遺伝という可能性もあります。ニキビができても治りやすいタイプの人と、治りにくいタイプの人がおり、治りにくいタイプの人や、繰り返すニキビに悩んでいる人には、皮膚科での治療をおすすめします。

― 皮膚科では、どんな治療をするのでしょうか?

 近年のニキビ治療は進化しています。以前は、炎症を抑える抗菌薬を使用するのが治療が中心でした。ママ・パパが10代の頃は、こちらだったかもしれませんね。これはアクネ菌の増殖は抑えますが、毛穴の詰まり自体を改善するものではないため、赤ニキビが治った後、毛穴の詰まりから再発しやすいという問題がありました。現在は、毛穴の詰まりを改善する薬が登場し、根本から治せるようになっています。アクネ菌に対する抗菌剤も、塗り薬、飲み薬などいろいろなタイプがあります。

 また、当院では、体の中から肌バランスを整える漢方薬とビタミンシリーズ、皮脂を取り除きピーリング効果のある石鹸や、VCローション、予防として皮膚の脂分と毛穴を調える最新抗酸化作用の外用剤(塗り薬)などを、一人ひとりの肌の状態とタイミングを見ながら組み合わせて治療していきます。あわせて、ライフスタイル(日常生活・食習慣)の改善も行います。

― ライフスタイルの改善とは、具体的にどのようなことでしょうか?

 不規則な生活リズムやストレスは、ホルモンバランスに影響しますし、食生活の乱れは肌トラブルの要因にもなります。夜9時以降の飲食習慣がある場は見直し、しっかり睡眠をとることで慢性的な睡眠不足を改善。朝食を抜いたりせず、栄養バランスのとれた食事についてアドバイスを行います。特にビタミンB群(レバー、赤身の肉、まぐろ、納豆、玄米など)は皮脂の分泌をコントロールし、ビタミンC群(緑黄色野菜やくだもの)は抗酸化作用があり皮膚の再生を助けます。青魚や大豆製品、卵など、良質のたんぱく質と脂質を積極的にとりましょう。10代はファストフードやスナック菓子が大好きな世代だと思いますが、ニキビに悩んでいるなら脂っこいものや甘いお菓子は少なめに。また、皮脂を増やす働きがあるリノール酸を含むピーナツもたくさん食べることは控えた方が良いですね。

 大人のニキビにも言えることですが、使用している化粧品やヘアケア製品が、皮脂を増やしたり毛穴をふさぐなど、ニキビ発生の一因になっている可能性があります。おでこやフェイスラインに繰り返しニキビができる場合は、リンスやトリートメント、ヘアオイルやスプレーなどを見直す必要があるかもしれません。

 ニキビや肌荒れの要因となる生活習慣はひとつだけではありません。さまざまな事柄の組み合わせによって皮脂が過剰に分泌したり、毛穴が詰まりやすくなってニキビが発生するのです。ライフスタイル(生活習慣)を見直すことは、ニキビなどの肌トラブルを改善するのはもちろん、体そのものの健康にもつながるのです。

― ニキビを増やさないために、自宅でできるケアや予防法を教えてください。

 これまでお伝えしたように、皮脂が毛穴に溜まることで発生し、そこでアクネ菌が増殖して炎症が起きるというのが、ニキビが悪化していくメカニズムです。この一連の流れを断ち切れば、ニキビが出来にくく、出来たとしても初期段階で悪化させずに治すことが可能です。

①洗顔はやさしく

ニキビ予防に、洗顔は重要です。冷水では皮脂が落ちにくいので、34~37℃程度のぬるま湯がおすすめまずは、ぬるま湯で顔全体を濡らすように軽く予洗いします。洗顔料や石鹸は泡立てネットなどを使い、しっかりと泡を立てましょう。この泡を顔全体にのせていき、手が顔の肌には直接触れないよう泡の弾力でやさしく洗いますゴシゴシこすらないように注意しましょう。顔に泡をのせている時間は30秒程度が目安です。すすぎは、泡が残らないよう、生え際やフェイスラインなども丁寧に。洗い終わったら、清潔なタオルで顔を包みこむように軽くおさえます。この時も、肌をこすらないように気をつけましょう。

 洗顔料を使用するのは、朝晩の1日2回が基本です。1日に何度も洗顔料や石鹸で顔を洗うと必要な皮脂までも落としてしまい、それを補おうと、さらに皮脂が分泌されてしまう可能性があります。体育の授業や部活の後に顔を洗う場合は、洗顔料を使わずにぬるま湯で洗い流す程度にしましょう。

洗顔

②適度な保湿

洗顔後は、適度な保湿が必要です。皮脂が多いからと、顔を洗った後にそのまま放っておくと肌が乾燥してしまい、肌本来のバリア機能が弱まったり、乾燥した肌が足りない油分を補おうとして、余計に皮脂を分泌してしまいます。逆にオイルタイプなどの過度な保湿は、毛穴をふさいてしまう可能性があるのでNG。刺激が少なく適度な保湿効果があるタイプを選んで、やさしくつけましょう。

保湿

③ニキビができても、さわらない・つぶさない

ニキビが発生すると、とても気になりますよね。だからといって何度もさわっていると、炎症が悪化して治りが遅くなることがあります。また、自分でつぶして膿を出したりすると、そこが茶色くなったり、肌が凸凹してニキビ跡になってしまうリスクが高くなります。ニキビができても、さわらない・つぶさないようにしましょう。

ニキビを触らない

④自己流ケアはしない

インターネット上などの本当かどうか分からない情報を、うのみにしてはいませんか? 間違ったケアが原因で悪化したり、ニキビ跡が出来てしまう可能性もあります。ニキビに悩んでいるなら、皮膚科へ相談して正しい知識とケア方法を身につけることが、ニキビの悩みから解放される早道です。

皮膚科

― fam+の主な読者は10代の子の親世代。この世代もニキビが出るということですが、大人のニキビと10代のニキビに違いはありますか?

 ニキビは『尋常性ざ瘡』という皮膚の病気で、それ自体は年齢による違いはありません。一生のうちの様々な年齢でみられます。大人の場合は皮脂の多いTゾーン中心とは限らず、Uゾーン(顔まわりや口周辺)や首などにも出ることがあります。ニキビの原因が毛穴の詰まりであることは先に説明しましたが、その背景として10代は成長ホルモンの影響による過剰な皮脂の分泌が大きな要因となるのに対して、大人のニキビは、年齢に伴うホルモンの影響や体質・肌質に加えて、化粧品や間違ったスキンケアが肌に負担をかけたり、睡眠不足や仕事のストレスが肌荒れを招いたり、喫煙や飲酒の影響といった要因の組み合わせが影響してきますが、治療法には大きな違いはありません。

― ニキビの症状自体は落ちついたけれど、ニキビ跡が気になるという人もいます。ニキビ跡を改善する方法はありますか?

 皮膚科では、今現在ニキビに悩んでいる人だけでなく、ニキビ跡で肌が凸凹になってしまったという悩みも相談できます。肌をなめらかにするピーリング石鹸や、肌を整えるVCローションのほか、自費診療となりますがレーザーフェイシャルやマイルド高周波治療など、現在はニキビ跡を目立たなくする様々な治療法があります。特に、顔のニキビ跡は本人も見た目を気にする場合が多く、対人面などで積極的になれない人もいます。治療して見た目が気にならなくなると、悩みが解消されて前向きになれたなど、精神面での効果もあるようです。


まとめ

 思春期は、成長ホルモンの影響により皮脂の分泌が増えて毛穴が詰まりやすくなり、アクネ菌の増殖が原因となってニキビが増えやすくなります。予防には、基本的な洗顔と適度な保湿のほか、しっかりと睡眠をとることや、栄養バランスのとれた食事など(和食がおすすめ)、生活習慣の見直しも必要です。スナック菓子やチョコレート、甘いジュースなどを日常的にとっている場合は控えた方が良いのですが、ストレスを溜めないことも重要なので、3回を1回に減らすなど、出来る範囲の努力からしていきましょう。

 ニキビは皮膚科で治せる病気です。10代を中心に誰もが経験するものですが、治りにくい・繰り返すニキビの場合は、専門医への相談をおすすめします。ニキビがあることで、気持ちが前向きではなくなることもあります。ニキビを治すことで気持ちが前に進み、いろいろなことに挑戦してみようとする気持ちも生まれてきます。ニキビで悩んでいる人がいたら、ぜひ優しい気持ちで声をかけて、皮膚科専門医での受診を勧めてみてください。昨今は、ニキビはもちろん、ニキビ跡の治療も可能です。

佐々木豪院長
佐々木皮膚科